ウェアラブル端末の登場がもたらすもの

2013年9月、SEO業界ではGoogleが新しいアルゴリズムとしてハミングバード(Hummingbird)を導入したことが話題になりました。このハミングバードは、自然言語による検索に対応するために導入され、今までのようなキーワードの羅列ではなく、「渋谷で飲み会をするのにおすすめのお店」のような、より自然で話し言葉に近い短文を用いた検索を実現するものです。

ハミングバードは来たるべきロボット時代の準備!?

ハミングバードは、GoogleやAppleといったIT企業が開発を進めているウェアラブル端末のために導入されました。Google GlassやApple Watchなどのウェアラブル端末には、キーボードやタッチパネルなどの入力インターフェースは搭載できないため、検索の指示などは音声で行います。そのため、ウェアラブル端末には自然言語を正確に把握する技術が必要不可欠となります。

そしてこの自然言語を正確に把握する技術は、鉄腕アトムやドラえもんのような、将来登場するかもしれない、人間と会話し自分で考える、人そっくりのロボットにも必須の技術でもあります。

ウェアラブル端末は、その名の通り身につけて持ち歩く情報端末のため小さい必要があり、細かい指示を与えるには主に音声入力を利用します。

自然言語検索がもたらすSEO対策への影響

ウェアラブル端末に音声で指示をするときは、「渋谷 飲み会 おすすめ お店 どこ」ではなく、「渋谷で飲み会をするのにおすすめの場所を教えて」というのではないでしょうか。この場合、指示から検索キーワードを拾い出すだけでなく、文脈から「場所」が「公園」や「空き地」ではなく「お店」であることも理解しなければなりません。つまり、自然言語検索の実現は、文脈を理解する技術をもたらします。

その結果、Webコンテンツは「キーワードの集合体」としてではなく、「意味を持った文章」として把握されていくようになるでしょう。そうなれば、コンテンツ中のキーワードの出現率や分布の重要度は今よりもっと低くなり、コンテンツの内容がより重要になるでしょう。つまりオリジナリティの高いコンテンツを作成するSEO対策が、より効果を発揮するようになるのです。

外部リンクの将来

ここでもう1つ、よりSEO対策に焦点を当てた話として、「外部リンク」の将来について触れておきます。外部リンクとは外部のWebサイトから張られたリンクのことで、これを利用したSEO対策は、非常に簡単な上に効果が高いため、多くの人が実行し、また、SEO業者のサービスにおいても、中心的な対策となっています。

現在も確実にある、外部リンクのSEO効果

SEO業者の方と話すと、「外部リンクの効果はもうないよ」という方によく出会いますが、2014年9月の時点でも、間違いなく外部リンクのSEO効果はあります。それを確認するために、Google で「18歳未満」もしくは「デスブログ」という言葉を検索してみてください。どのようなサイトが1番に表示されると思いますか?
なんと、「18歳未満」ではYahoo!JAPANが、「デスブログ」では、とある女性芸能人のブログが1番に表示されます。しかし、このどちらのサイトにも、「18歳未満」や「デスブログ」というキーワードは掲載されていませんし、関連するコンテンツもありません。では、なぜ1番に表示されるのでしょうか?
「18歳以上」に指定されているWebサイトでは、法令に従って年齢確認をし、「18歳未満」の人を退出させなければなりません。実は、この18歳未満の人の退出先として、多くの場合Yahoo!JAPANが指定されています。その結果、意図せず集まった多量の外部リンクの効果で、Yahoo!JAPANは「18歳未満」というキーワードの検索結果において、1番に表示されるのです。そして、同様のことが「デスブログ」にもいえ、これらは外部リンクのSEO効果が今も十分にあることを雄弁に語っています。

Googleで「18 歳未満」を検索した結果です。検索結果1位にYahoo!JAPAN が表示されています。

将来、外部リンクは効果を失う!?

このように現在も大きな効果を発揮する外部リンクですが、2014年5月5日、Googleのウェブスパムチーム・品質管理チームの責任者であるMatt Cutts氏が、「コンテンツを書いた人を重視し、集めているリンクの数はあまり重視しない方向に変更していくだろう」(http://www.youtube.com/watch?v=iC5FDzUh0P4)という内容の発言をしたことが、大きな話題となりました。

この取り組みは技術やコストの面から中止されたようですが、外部リンクが多くのSEO業者に利用され、価値のないコンテンツの表示順位を押し上げる要因になっていることをふまえると、検索エンジンは何らかの方法で外部リンクの効果を弱める対策を続けていくと予想されます。これまでずっと、もっとも主流の手法であった外部リンクでさえ効果を弱められ失われていきますので、これからのSEO対策では技巧的な施策の効果は低下し、コンテンツの「質」がより重要になっていくでしょう

将来的には「質」がより重要になる

技術の進歩により、よりコンテンツの「質」が重視されることが予想されます。その兆しは、すでにさまざまなところで見受けられます。

外部リンクはピカソの絵を評価するための指標!?

外部リンクはSEO対策で大きな効果を発揮するため、多くの業者が利用し、検索エンジンはその対策に追われています。では、なぜ検索エンジンは外部リンクを評価対象から外さないのでしょうか?その答えは、「ピカソの絵」にあります。

システムでは評価しにくい、ピカソの絵

皆さんも、クリスチャン・ラッセンとパブロ・ピカソをご存知と思います。どちらも多くのファンを持つ素晴らしい画家ですが、非常に細かくイルカやクジラなどを描くラッセンの絵は、線や細部に渡る丁寧さ、被写体の再現性、構成、そして配色などの要素を数値化した公式を作れば、コンピュータでも評価できます。しかし、抽象的で変幻自在なピカソの絵を評価する公式は作れません。

点数が低くても、素晴らしいものは素晴らしい

同じことがWebコンテンツを評価する際にも起きます。コンテンツ量やキーワードの使われ方、構成、情報の鮮度などを数値化することで、多くのコンテンツは評価できます。しかし、それだけではピカソの絵のような個別の要素ではなく、全体として素晴らしいコンテンツや非常に特殊な技術を利用したコンテンツを評価できません。

これを解決しているのが、外部リンクです。Webの世界では、面白かったり参考にしたりしたコンテンツを紹介する際には、参照元にリンクを張ります。つまり、他サイトから多くのリンクが張られているということは、何かしらの「人気を集めている」といえます。検索エンジンはこの関係に注目し、張られているリンクの数を「人気投票の票数」と見立て、ピカソの絵のようなコンテンツを評価する指標にしているのです。